やりたいことにどんどん出合い、次々と実現させている方々は、どのように日常と向き合っているのだろうか。毎日使うスキンケアが健やかな肌を導くように、どんな一瞬、一瞬を積み重ねて、現在に至るのかを伺うインタビュー企画。
7人目は、定額で絵画をレンタルをできる、アートのサブスクリプションサービスを提供する、株式会社Casie(かしえ)の代表・藤本 翔氏。
――アートを月毎にレンタルできる、サブスクリプションサービスを始めようと思ったきっかけは?
創業の原点は、僕と芸術家だった親父が暮らした11年間の記憶です。アーティストの活動だけで生計を立てる難しさを親父の背中を見ながら痛感して育ったので、創作活動だけでご飯を食べられる人を1人でも多く生み出したいと考えるようになりました。そのためには、作品をとにかく流通させなければならないんですよね。売れる、売れない以前に、作品が人の目に触れる機会がとても少ないなと感じました。「作品を1点でも流通させるにはどうしたらいいか?」というのが起業の着眼点です。流通させるとなると、販売よりも定額制のサブスクリプションで、借りる、返すようなものの方がしっかりブーストがかかるだろうなと思ったんです。
洋服は試着して決められるのに、なぜアート作品だけ一発勝負なのか
サブスクリプションサービスを選択したのには、「流通」という観点だけでなく、ユーザー目線もあります。きっかけは、僕自身の消費者としての経験ですね。結婚して奥さんと一緒に住み始めた当時、自宅に絵を飾りたいと思って、ネットでいろいろ探していたんですね。悩んだ挙句、大手家具店でインテリア雑貨として大量生産されている小さい額を飾ってみたんですけど、5秒で飽きたんですよ。「これ絶対違うな」と。
それでやっぱりインテリア雑貨として工場で製造されているものではなく、アート作品が欲しくなって、もう一度探そうとしたんですけど、もう何から始めたらいいのか分からなくなってしまって…。そこでアーティストの方たちに直接会いに行って、話を聞いたりして。見せてもらったものを買うかどうか頭のなかで自宅に飾ってある姿をシミュレーションして悩んでみたり、そういうことを色々やっていました。
そのときに「さまざまなアーティストと受動的に出会うことができて、作品を何点か自宅に飾って、セルフ展覧会をして、ぴったりの一枚を選びとる」ということができるサービスが、国内で絶対に必要だなと思ったんですよ。服は試着して決められるのに、なぜアート作品だけ一発勝負なのか、なんで高額なものなのに一か八かなんだ、という思いがすごくあった。僕みたいに「アートが欲しいけど、自分に合ったものを探すのにどうしたらいいか分からない」「ピンとくる作品に出合えなくて、結局インテリア用のアート雑貨を購入したけど、なんか違う」というニーズを満たすサービスが必要だなと。
――「KINGU」は上質な成分をたっぷり配合したツールで、スキンケアを「贅沢な時間」にして欲しいという願いが込められています。モノを選ぶときにモノに込められた「願い」や「背景」を気にされますか?
ぼくは消費活動において、意味レイヤーで選択しているところがありますね。「安いから」とか「この不便が便利になるから」とかの合理性のレイヤーではなく、全部意味レイヤーで決断します。この商品にはこういう思いや意味が込められているから、それを解読して、消費する、というのがぼくのスタンス。
たとえば、ぼくの自家用車は、1989年式のヴィンテージカーで、昔のアメリカ映画に出てくるフォルクスワーゲンのバンみたいなモノなんですけど、この車は機能がとても悪いんですよ。子どもが3人いて、5人家族なんですが、みんなで乗り込むから、よもやこの車は我が家というファミリーを象徴するアイコンなんですよね。高速道路で80キロ以上は出ないし、夏はエアコンだって効かない、修理するために入退院を繰り返すし…。でも、この子は家族みんなが愛する象徴のようになっているので、ぼくらにとっては、単なる移動手段以上に意味があるものなんです。全然便利でなくて、むしろ不便ですけど、「不便益」という最近流行りの言葉どおりで。そうしたストーリーのある、意味のある消費活動が大好きなんですよ。モノに関して、安くて便利だから、とりあえずいっぱい買って、集めるとかはないです。
「KINGU」は上質なリーフレットで成分のこだわりや提案を教えてくれるので、意味レイヤーで消費活動するぼくにはもってこいだなと
今回試した「KINGU」のクレンジング剤も、ブランドの提案や成分へのこだわりが詰まった、上質な紙でできた大判の商品リーフレットが箱に折りこまれていますよね。意味レイヤーで消費活動するぼくにはもってこいだなと思いました。ぼくはスキンケアに関しては30代後半から始めて、それまでまったくやってこなかったんですよ。だからこそ、ブランドが商品に込めた意味に興味があるし、物品というより意味を購入したい。なぜなら、道具として最低限は機能してくれるような、安価なものを使うなら、それまでの石鹸で全身を一気に洗っていたときと変わらないじゃないですか。せっかくやるならちゃんとやりたい。ちゃんとやらないなら、わざわざやらなくていいかなって。
――30代後半でスキンケアを始めたきっかけは
夏にとても日焼けするタイプで、サーフィンとかマリンスポーツが好きなので、気がついたら夏の間じゅうずっと日焼けしています。だからスキンケアに対しても「本当はやらないといけないんだろうな」という気持ちはどこかにありました。僕は今39歳なんですが、同世代の自分の友だちを見ているとやはり老化がすごくて、それを見ていると自分も気になり始めましたね。周りがみんな老けていって、昔校内で輝いていたクラスメイトがどんどん老けていくわけですよ。そういうのを見ていると自分も老けていくんだろうな、と気にし始めますよね。しっかりケアして心おきなく遊びたいですよね。休日にサーフィンしたり、子どもたちと一緒に釣りに行ったり、海に行くのが大好きなので我が家は。僕は用事もないのに「海に行こう!」とすぐに言い出しますからね。
藤本 翔
アートのサブスクリプションサービス会社「Casie」代表取締役CEO。
可能性に満ち溢れたアーティスト1,000名以上と契約し、預かった多数の作品が、多くのユーザーや未来のファンと結びつく仕組みを提供している。複数のアートと受動的に出合える仕組みをつくり、作品が評価される機会が増え、創作活動の継続へとつながり、日本のアートシーン全体を盛り上げることをミッションとしている。